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       1961年第4回クラブマンレース(ジョンソン基地)ー1

                       はじめてなった本格的ロードレース
                      各クラスとも初優勝者続出


 第4回全日本モーターサイクルクラブマンレース大会は1961年7月22,23日の両日,埼玉県武蔵町のジョンソン基地において行われた。主催は全日本モーターサイクルクラブ連盟と横田基地に勤務する米空軍兵士によって結成されている「ヨコタモーターサイクルクラブ」の2つの団体である。後援はわが国のレース界を積極的に育て上げてきたシェル石油と本誌である。

 7月22日(土曜日)は50cc,125cc,250cc各クラスの予選がそれぞれ3組に分かれ,2日目の23日の日曜日には、各クラスの決勝が快晴の炎天下で出場台数298台,観衆3万を集め盛大に行なわれた。

 コースは1周3.2kmの平坦路で,現在使用中の飛行機滑走路のため,ちりひとつないまでに管理され,舗装路以外は見渡す限りのグリーンベルトで,砂埃りも舞い上らない。クラブマンレースで砂埃のないのは今回が初めてである。2つのヘアピンと同数の右カーブと3つの左カーブをもつこのコースは,最大の直線路が1.2km,最大のコーース幅30m,そして,バックストレッチの幅も16mあり,その路面は砕石舗装というロードレースには最適の条件がそろい,クラブマンロードレースとしては,全く理想的なコースといえるものであった。

                

 7月22日,土曜日。この日は開会式についで予選が行われた。出場台数298のなかには,日本モーターサイクルレース史上初めての女性ライダーである田中照子(東京オトキチ)の顔も見える。入場式は8時の予定であったが,その時期には霧がふかく,1.2kmの直線コースは乳色のガス溶けて,その先は見えない。8時30分,日立プラグの宜伝カーが開会式の集合をうながしてビットを巡回する。8時40分,開会式はまだ始まらない。排気音はとだえ,選手達は集合をはじめた。

 8時55分,ビット付近から「クワイ河マーチ」が聞え始めた。これは日立の宣伝カーが,選手達を誘導し,その先頭に立っての行進曲である。入場式がはじまった。宣伝カーとそこから流れ出る「クワイ河マーチ」を先頭に,各連盟支部の名前を書いたプラカードと支部旗を押しなてて,一群の選手団が,ゴール地点へやってきた。

                        

 8本の連盟支部旗にとりかこまれて,本レース大会名誉会長であるヨコタMCC会長のジョン・C・レイノルド氏の挨拶が通訳つきでのべられ,次に大会々長酒井文人の「カエリミマスレバ…‥」にはじまる挨拶,ジョンソン基地副司令官の祝辞,選手団長井口進の選手宣誓,そして9時25分,大会々長の開会宣言が行われた。

 スタートは2列に並んだ押しかけ方式で,スタートマンは,約1年間にわたって欧州各地のレースをみてきたシェパードMCの大関重雄とヨコタMCCのクラブ員の2名が交代で行なった。審判長は神奈川県支部長の鈴木光治,計測は陸連埼玉県支部の本橋一雄と女性スポーツライダー及び学生アルバイト25名とから編成されていた。
 なお燃料はシェルの90オクタン価が使用され,2サイクル用混合油は自由選択であった。

50ccクラス

10周 32.1km

西久保功(ランペット)初優勝(平均時速)87.63km/h
吉村嘉光3連勝ならず,1〜7位までランペット

50cc予選

 予選各組8位までが決勝に進出する。予選1組は7月22日,9時50分にはじまった。10周32.1km(1周は3.2kmであるが,スタートとゴール距離100mが加算される)。このレースは,スタート直後,和田政憲(ランペット),吉村嘉光(ランペット),大竹徹(ランペット),石橋保(ランペット)が,鋭く一群となってとびだした。3周目には石橋がトップ,2位は和田,3位大竹,この順位は5周まで続き,この3者が先頭,本命の吉村はこの周10位にいる。7周目トップの石橋と2位の和田の間には周おくれが2車入り,和田と大竹の激しい2位争いの結果,8周目には大竹が2位,和田3位となる。この3車と4位桑原孝雄(ランペット)との間には周遅れが4車もはさまる。セルペットの矢島金次郎はホームストレッチの直線路ではランペットより早いとは見えないが,彼の身体は車の一部分と化したかのように低く平たくぴったりとタンクの上に伏せている。彼は完走組の最後8人目である。
 10周目,石橋は再び周遅れを2人後にしてゴール。大竹2位約50m離れて3位和田4位の桑原との間には周遅れが1人はさまる。5位は本田広(ランペット)6位にはスポーツカブの菊地津守,7位はギルバートソン(ランペット)8位には矢島金次郎が入った。吉村は6周目ピストンに穴があき脱落した。スクランブルレースの覇者鈴木誠一(セルペット)も1周目シリンダヘッドボルトが折れて脱落。

 50cc予選2組は10時30分スタート,半場精一(ランペット),横山徹(ランペット),一之瀬一郎(ランペット)が最後までトップ争いを続ける。横山1位,一之瀬2位,半場3位,4位には,これもまた,3者のはげしい争いの結果西久保功(ランペット)が,井上正夫(ランペット),平根隆雄を下してゴールする。7位には中谷誠(ランペット),8位田代光男(ランペット)が入る。

 予選3組は11時のスタート。霧は晴れ,陽がさしてくる、暑い。むし暑い。午後からはもっと暑くなるだろう。1周目,森下勲(ランペット)がトップ,すぐ後を城北ライダースの藤井敏雄(セルペット)がつき,室町明(セルペット)と吉沢滋夫(ランペット)が続く。この組に出場した田中照子(ランペット)は10位前後を走っている。2周目も森下がトップで2位に上った長尾正(ランペット)を100mほど離している。森下は快調にとばしているが,それは予選とも思えぬとばし方で,2位との差をどれだけ開くことができるか,自ら試しているもののようだ。しかし,この最中にも森下のレーサーは病魔に侵されていた。そして3周目森下の不運ははじまった。彼がこないのだ。きたのは前周2位だった長尾と藤井敏雄,浜部英喜(ランペット),久野勇(スポーツカブ)の順。森下勲はピストンに穴があいて脱落という。後半藤井敏雄のセルペットと長尾のランペットのトップ争い。そしてカーブで速度を落しながらも直線で点を稼ぐ田中照子が前車の脱落に助けられて7位,そして,老巧な久野がトップでゴールインしたほかには注目すべきことはない。

 この予選の結果,ベテランとして,注目されていた吉村嘉光,鈴木誠一,森下勲らは姿を消した。第2,3回クラブマンレースの勝者吉村嘉光は予選で早くも3連勝の夢は消えた。

50cc決勝

 50cc決勝は23日の第2番目のレースとなった。この日は125ccの決勝からはじまった。黒雲におおわれた大空の下には,風があって,昨日ほどの暑さはない。
 9時42分,50cc決勝のスタート旗が下りた。西久保、長尾,藤井敏雄がとびだした。井上はエンジンがかからない。押している。
 1周目、一之瀬,西久保,横山,石橋、長尾,大竹のランペット陣にセルペットの藤井敏雄,ギルバートソンが一群となって直線に入ってきた。続いて和田,本田広(ランペット),平根隆雄(ランペット)とスポーツカブの久野が,また一群となって右カーブを廻り,直線に入る。このあと,音はとだえ,走り去るレーサーの音が小さくなっていく。雲の切れ間から,強い陽差しが代りつけはじめた。
 2周目、横山がトップ,2位を10mほど離している。一之瀬,石橋,西久保が同時に直線に入る。続いて大竹が独り,その後にはギルバートソン,藤井,長尾がひとかたまりとなってやってくる。和田,平根,本田,中谷誠(ランペット)が一人ずつ直線に入る。横山は5周までトップを守る。
 6周目,石橋トップ,次いで西久保,横山は3番目,1位と2位の差は5 mくらい。
 7周目,各車の差は大きくなった。トップは石橋、10 mおくれて西久保,20 mおくれて横山,50 m離れて一之瀬,これと同じくらい離れて大竹が点々とつづく。これから約200mも離れて6番目の車がやってきた。長尾だ。50 mおくれて中谷がついてくる。
 8周目,トップ陣の順位は変りない。トップ3位までは一群となって疾走,4位の一之瀬を200mくらいも離して逃げ去った。一之瀬と5位の大竹の間には1周おくれの吉沢が入る。
 9周目,トップの一群が殆んど同時にヘアピンに到着した。このヘアピンを出る1秒の何分の1かの差が直線のゴール地点では1秒,2秒の差となる。トップは西久保,続いて横山,新宅都宏(スポーツカブ)と矢島金次郎(セルペット),石橋が直線に入った。新宅と矢島金次郎は1周おくれである。100mほどおくれて一之瀬が,また100mほど離れて大竹が,それぞれ右コーナーのインコースぎりぎりに入ってくる。田中照子と須田高正(オートペット)はともに1周おくれだが,それでも激しくせり合って本部前を通過。照子の直線の追い込みは他の男性ライダーに劣るものではないが,コーナーワークのあまりにも慎重なスピードダウンが,彼女を1周おくれにしたものらしい。
 10周目、多田健蔵氏が市松旗を拡げてゴール地点に立った。この旗が最初に迎え入れたものは西久保功である。約30mおくれて横山徹の赤いチョッキが,それから60mほど離れて東京サイクロンの石橋保が,それぞれランペットでゴールインした。この次100mおくれて,田中照子と須田高正(この2人はともに1周おくれ),中谷誠,長尾正がぞくぞくと帰ってくる。このあとしばらくとだえたが,藤井敏雄がひときわ高いセルペットの排気音を伴って,そして吉沢滋夫(1周おくれ)、浜部英喜,桑原孝雄,久野勇、和田政憲,菊地津守,田代光男全部が戻った。ゴールインしたもの周遅れを含めて19人,5人が脱落した。

50cc 10周 32.1km
順位 ライダー名 車名 クラブ名 タイム 平均時速
1 西久保功 ランペット ABCスピード 21.58.8 87.63
2 横山 徹 ランペット 東京オトキチ 22.00.0 87.55
3 石橋 保 ランペット 東京サイクロン 22.06.5 87.12
4 一之瀬一郎 ランペット 東京ロード 22.17.1 86.28
5 大竹 徹 ランペット ハイスピリッツ 22.21.6 86.14
6 中谷 誠 ランペット 東京イヌワシ 22.46.8 84.55
7 長尾 正 ランペット 東京ロード 22.56.4 83.97
8 藤井敏雄 セルペット 城北ライダース 23.06.0 83.38
9 浜部英喜 ランペット 東京レーシング 23.15.0 82.84
10 本田 広 ランペット オールジャパンGP 23.18.0 82.66
11 久野 勇 スポーツカブ 船橋ホンダチャンピオン 23.30.0 81.96
12 和田政憲 ランペット 大阪99 23.46.2 81.03
13 菊地津守 スポーツカブ スピードパイロット 24.02.8 80.09
14 田代光男 ランペット 赤坂オートクレージー 24.13.5 79.50
15 新宅都宏 スポーツカブ マッハエキスプレス 1周オクレ
16 矢島金次郎 セルペット 城北ライダース 1周オクレ
17 田中照子 ランペット 東京オトキチ 1周オクレ
18 須田高正 オートペット 凡凡苦楽部 1周オクレ
19 吉沢滋夫 ランペット 東京スリーホークス 1周オクレ
R ギルバートソン ランペット 東京オトキチ
R 井上正夫 ランペット 東京オトキチ
R 平根隆雄 ランペット 東京ロード
R 半場精一 ランペット 東京オトキチ


125ccクラス

15周 48.1Km

藤井敏雄(コレダ)初優勝(平均時速)100.32km/h
森下勲(トーハツ)不運の9位,トーハツ陣上位独占を逃す


125cc予選

 125cc予選は22日,50cc 3組の予選が終ってから,11時36分にはじまった。各8位までの入着者が決勝に進出する。  予選1組1周目,三吉邦男(トーハツ),山下藤太(コレダ),R.カニンガム(トーハツ),森下勲(トーハツ),田村三夫(トーハツ),本田広(トーハツ),桑原孝雄(トーハツ),ギルバートソン(トーハツ)が続き,ペンリイの松本英一がその後につづく,2周目も三吉がトップ。3周目山下藤太がトップで、彼は5周までそれを守る。6周目、森下勲がちょっとトップに顔を出すが7周目再び三吉が代わり、9周目またも森下がトップに出る。このあたり森下、三吉,山下の顔見知りの3人は激しい首位争いともみえるが,また一方適当なコーナワークと追越しの遊びともみえるシーソーゲームを演じている。山下は完全な伏身で,森下は頭を上げて余裕たっぷりに走り去る。こんな風にトップ陣が一種の遊びをやっているうちに4位以下が近づいてきた。11周目,松本,石井義男(ベンリイ)カニンガム,D.キイーグ(べンリイ)等がついてきた。13周目本田広(トーハツ)が左手を血だらけにして救護所へやってきた。
 15周目,森下は2位を100mくらい離してゴールイン,2位三吉邦男,3位山下藤太,4位松本英一,5位石井義男までが一群となって続く。

 予選2組は12時15分スタート。1周目,井上正夫(トーハツ)、大久保力(トーハツ),臼田健三(トーハツ),杉山剛正(コレダ),根岸敏雄(ベンリイ)が一群となって通過。2周目,トップの井上,大久保の順位は変らない。3位に杉山が,4位には根岸が,5位に臼田がその順位を入れちがえる。4周目,ベンリイの根岸がトップ,コレダセルツインの杉山(城北ライダース)は2位,3,4位は井上,大久保の東京オトキチ組,最後尾は城北ライダースの久保一家の長男,久保靖夫が調子の悪いコレダセルツインで通過。この久保靖夫がレースに出るのはこれがはじめて。5周目吉村が上ってきてトップに立った。彼は1周目11位だったのをここまで上ったのだ。2位は臼田,3位井上,4位杉山,5位大久保,根岸はピットに寄る。6周から最後の15周までトップを守った吉村は,このレースには珍らしい巾広い一文字ハンドルである。彼は,直線で伏身になると手首が上に上っていかにも乗りにくそうだが,このハンドルでないと小柄な彼はコーナーで車を抑えきれないのだという。7周日7位にいた城北ライダースの杉山は彼のセルツインを8周目にピットに入れた。9周目トップ陣は去ったが,杉山は動かない。1分は経過した。1分30秒,セルツインは動き杉山は1周遅れて再スタートした。10周目、トップの吉村は独走,井上,大久保とレンシェポルツの宇野順一郎(ベンリイ)が4位でこれを追う。臼田ピット入り,30秒後に再スタート。11周目トップの吉村は2位を300mも離している。12周目,2位に大久保が上った。13周目,吉村、300mおくれて大久保,井上,宇野と続き,その次は周遅れの丸山隆(べンリイ)が入る。
 15周のゴールには,吉村は2位との間に周遅れを2人引き連れ,400mくらい離してゴールイン,2位は井上,3位は本誌のテストライダーである大久保力が続いて入った。

 予選3組は午後1時のスタート。和田政憲(トーハツ)鋭どくとびだし,長尾正(トーハツ)体でぐいぐいと車をあおってのスタートダッシュ,2周から5周まで半場精一(トーハツ)のリード,この間藤井敏雄(コレダ)と横山徹(トーハツ)の2位争いがつづく。6,7,8周と藤井がトップ。このレースは藤井,半場,横山だけのレースのようだ。10周目からこの3人と4位B.リック(べンリイ)の間には周遅れが4人も入りこむ,岡野正雄(東京クレージーライダース)は茶かつ色のヤマハYA5。彼は8周目から1周遅れとなりエンジンの回転があまり上っていない。
 13周目,トップの藤井敏雄はしきりに車の後をみる。タイヤかチエンか,何か良くないことがあるに違いない。彼に20mおくれて横山,それから100m近く離れて半場が通過。
 15周目,藤井敏雄が最初にゴールした。100mほど離れて横山が,それから300mくらい離れて半場がゴール。予選のトップにコレダが入ったのはこの藤井敏雄1人。

125cc決勝

 125cc決勝は7月23日の最初のレースとなった。風のないむし暑い午前8時59分,予選通過の24車がスタートした。 エンジンがかかって走り出した順序は三吉邦男(トーハツ)山下藤太(コレダ)井上正夫(トーハツ)大久保力(トーハツ)の面々である。
 1周目森下勲がトップその次は半場,3番は藤井敏雄,4番は東京サイクロンの吉田治(トーハツ,彼は1959年浅間の第2回クラブマンレース501cc以上クラスにBSAに乗り優勝している)、5番山下藤太、6番三吉の順,吉村嘉光は12位,べンリイのトップは13位の宇野順一郎,14位も同じべンリイの石井義男,15位は軽井沢ポルカノライダーの高橋義雄。レースは,トーハツ,コレダ,トーハツ,べンリイの順になる。
 2周目半場がトップ,藤井セルツインが2位,森下3位,
 3周目
藤井がトップ,2位半場,3位森下,
 4周目
森下トップ,2位半場,3位藤井,この3車は2mおきに並んでとび去る。この第1陣につづいて,2陣,3陣,4陣,5陣と,それぞれひとかたまりのせり合いがつづく。三吉は3周で切れたチエンを片手にもち,ピットに入る。
 5周目藤井が再びトップ,50mおくれて,半場,森下のせり合い。200m近く離れて,一之瀬,芳永(周遅れ)のせり合い,50mおくれて和田,井上,吉村,石井の戦い、またその後では高橋,松本のべンリイ同志の戦いが続く。
 6周目山下,加藤がやってきたがこれは本当は5周の後尾だ。次の車番59番から6周目となる。59番は城北ライダースの藤井敏雄19才のセルツインだ。2位森下,3位半場,2位の森下は子選の時のように顔を上げず,懸命に追っている。1位から3位までの間は30mくらい。それに約200mおくれて一之瀬,またそれから100mおくれて井上,和田,吉村のトーハツ組,続いてべンリイ組の松本,臼田,高橋,石井の4車。カニンガム(トーハツ)がこの一群の最後を走り,100mおくれて,べンリイ組がまた続く。かん高いコレダとトーハツの2サイクル音が直線コースの果に消える時,べンリイの4サイクル音がいんいんと観覧席にこだまして,数車の4サイクル音が共振してごうごうと鳴り響きトーハツの後に消えていく。
 9周目トップの藤井の守りは固く,森下,半場の挑戦者はかえって反撃にあい,その差を200mと離される。そして,3位と4位井上との差は500m近く開く。4位争いは井上,加藤繁(トーハツ周遅れ),一之瀬の間で行われる。この周にピット周辺でチャンピオンレース125ccに出場予定の松内弘之(城北ライダース)が左足から血を流しており,コースの向側の救護所へ手当を求めているが,レース中なのでコースはなかなか横切れない。 レースはいま3分の2終った。
 10周目である。トップの藤井はもう誰れからも挑戦されない。むらがる敵を200mも後にして走り去る。2位には半場,3位の森下は第2ヘアピンで転倒,この時タンクキャップがとんでしまう。10秒の後彼は3位を失わず再スタート。後で聞いたところでは,森下の燃料コックがつまってガソリンがスムーズにいかないので,タンクキャップを外し口でタンクの中に空気を送りこんで走ったのだという。口で吹くのはもち論直線コースであるが,これがカーブぎりぎりまで吹くので,このレース3回も転倒したという。この森下から500mくらいも離れて井上,100mおくれて一之瀬,吉村,和田のトーハツ陣が10mおきにやってくる。
 12周目
,藤井,続いて周おくれのB・リック,竹山隆司(べンリイ)が現われる。次は2位の東京オトキチの半場,その次に来るはずの森下がこない。いや,きた,大分おくれている。200mも離れている。いまの彼には優勝ののぞみは殆んどない。森下に400mおくれて井上,300mおくれて吉村,一之瀬,和田の3者がせり合って直線コースを通過。
 14周目トップ藤井と2位に上った森下との問には4人もの周遅れがはさまれる。こうなると,森下が藤井に迫るのはなお一層不利となった。4位,半場と森下の間にも周遅れが1人いて,3位と4位の差は5〜600mにも開いている。半場から300mおくれて,一之瀬と吉村が接戦を展開。
 15周目 城北ライダースの藤井敏雄は堂々たる初優勝のゴールインをした。彼の後には周遅れを6車も引つれて,そして,その6車はまず,最初に100mはなしてD.キイーグをそれから10mでカニンガムを,20mに加倉井良吉(ベンリイ)とB・リック(べンリイ)の2人を,さらに20mはなして加藤繁を,10mおいて竹山隆司(ベンリイ)をつれてゴールインしたのだが,この6人の周遅れの後はしばしの間エンジンの音はとだえた。やっと,本当の2番目,2位がやってきた。森下勲である。森下と1位藤井の差は時間で55.9秒であり,藤井のタイムから1周の平均タイムを割り出すと115.0秒となり約半周リードしていることになる。3位は森下のすぐ後で井上正夫(東京オトキチ)が入る。彼に100mおくれて2周遅れの山下藤太(コレダ)が,そして最後まで戦い続ける一之瀬(東京ロード)と吉村(東京オトキチ)がせり合いのままゴールイン。せり合いは石井,半場,松本にも起り,ゴールイン。和田,臼田、高橋が1車ずつ次々と帰ってくる。最後に芳永がひどく遅い速度でたどり着いて,125ccのレースは終った。
 このレースで,クラブマンレースとして始めて125ccクラスで平均時速100km/hをこした。藤井の平均時速100.32km/hはもち論新記録であり,従来は1959年浅間での第2回クラブマンレースの北野元(べンリイ)の93.7km/hであつた。

125cc 15周 48.1km
順位 ライダー名 車名 クラブ名 タイム 平均時速
1 藤井敏雄 コレダセルツイン 城北ライダース 28.46.0 100.32
2 森下 勲 ト−ハツ オールジャパンGP 29.41.9 97.18
3 井上正夫 ト−ハツ 東京オトキチ 29.43.4 97.10
4 一之瀬一郎 ト−ハツ 東京ロード 30.00.4 96.18
5 吉村嘉光 ト−ハツ 東京オトキチ 30.04.1 95.98
6 石井義男 ベンリイ 東京サイクロン 30.12.0 95.56
7 半場精一 ト−ハツ 東京オトキチ 30.12.2 95.55
8 松本栄一 ベンリイ 東京バッハロウ 30.12.5 95.54
9 和田政憲 ト−ハツ 大阪99 30.25.5 94.86
10 臼田建三 ベンリイ ハイスピリッツ 30.30.4 94.60
11 高橋義雄 ベンリイ 軽井沢ボルカノライダー 30.34.4 94.40
12 D・キィーグ ベンリイ 横田MC 1周オクレ
13 R・カニンガム ト−ハツ 東京オトキチ 1周オクレ
14 加倉井良吉 ベンリイ 88MC 1周オクレ
15 B・リィック ベンリイ AJMC 1周オクレ
16 竹山隆司 ベンリイ 横須賀ナイトス 1周オクレ
17 山下藤太 コレダセルツイン 城北ライダース 2周オクレ
18 加藤 繁 ト−ハツ 東京ロード 3周オクレ
19 芳永清明 ベンリイ 東京スリーホークス 6周オクレ
R 三吉邦男 ト−ハツ 東京スリーホークス
R 大久保力 ト−ハツ 東京オトキチ
R 宇野順一郎 ベンリイ レンシュポルツ
R 横山 徹 ト−ハツ 東京オトキチ
R 吉田 治 ト−ハツ 東京サイクロン


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