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第8号(1961年3月発行)

今年度は世界6大レースに参加・マン島TTレースを皮切りに

 当社は昨年度イギリス・マン島TTレース参加に引き続き、今年度はさらに大さな規模で世界選手権グランプリ・オートレースに出場することになりました。つまり六月十二日から開かれるマン島TTレースを皮切りに、オランダTT・ベルギーグランプリ・アイルランド・アルスターグランプリ、イタリーグランプリ、スエーデングランプリと世界十大レース中、主な六大レースに参加する準備を着々と進めています。                       ノ
 そこで本号ではこれらのレース参加にちなんで、昨年度当社TTレース出場チーム監督岡野研究部次長のレースについての解説、当社チームの一員と決まった南アフリカのペエティ・ドライバー氏の横顔、さらに世界レース参加を記念して実施されている「世界レース参加紀念セール」の内容を紹介することにしました。

海外レース参加に寄せて

研究部次長 岡野武治

 今年もまたレースのシーズンになろうとしている。春に始って秋に終わるレース日程も既に発表された。過去数年問レース界に君臨していた常勝MVアウグスタ(イタリー車)が昨年限りでレースから引退するというニュースも大きく伝えられている。・・・こんな雰囲気で今や世界のモーター・サイクル・レース界は色々の風評、話題でにぎわっている。

 全世界のモーター・サイクル・クラブの統卒機関であるFIM(本部はスイスのジュネーブに在る)の規約に基いて各国の支部団体が世界選手権を賭けて開催する所謂グランプリレースが本年度は十ケ所あります。これらレースは”草レース”と違い国際的に最高の権威と信用をもつものであり、各国の著名なオートバ一イメーカーとライダーが車の性能と技術を競うレースであります。選手権を賭けるという意味は次のような仕組によるためです。例えばどこかのグランプリ・レースで或るクラスに優勝しますと、メーカーとライダー共に8点を与えられます。従って10レースに全部そのクラスで優勝しますと80点満点となり、この年間の得点でその年の選手権車、選手権者が決るのです。だから自信のあるメーカーの車は可能な限り多くのグランプリに出場して得点をかせぐ訳です。しかしこれらレースの意義は、単にその年の選手権を決定することにとどまらず、参加ライダー・参加車及びそのメーカーの国際的な格づけ評価の意味も持っていることです。

 最近わが国の二輪車工業は驚異的な成長を遂げ、生産台数もここ数年来遂に世界第一位を占めるに至りました。性能の面においても世界的レベルに到達し、輪出の実績も急カーブを描いて上昇しています。このような輸出の飛躍的増大という事実が端的に示すように、わが国の二輪車が遠く海外で高く評価されるようになったのは、何より一九五九年以降の国産車のグランプリ・レースヘの参加と、その優れた成績のためと考えられています。

 前置きが長くなってしまいましたが、本年度の十大グランプリ・レースの日程を紹介いたします。

  @4月23日    バロセロナ        スペイン・グランプリ.
  A5月14日    ホッケンハイム      ドイツ・グランプリ
  B5月12日    クレルモントフエランド フランス・グランプリ
  C6月12・.14・16日             マン島TTレース
  D6月24日    アッセン          オランダTTレース
  E7月2日     スパ            ベルギー・グランプリ
  F8月12日    ベルファスト        アルスター・グランプリ
  G9月3日     モンツア          イタリー・グランプリ
  H9月16・17日 クリスチアンスタット   スエーデン・グランプリ
  I10月15日   ヴェノスアイレス     アルゼンチン・グランプリ

 昨年はマン島のTTレースのみに参加しましたが、その貴重なデータを基に、この一年問更に研究を重ねレーサーの性能の大巾な向上を実現しましたので、このレーサーでTTレースをはじめ、.オランダTT・ベルギーグランプリ・アルスターグランプリ・イタリーグランプリ・スエーデングランプリの6大レースに出場し、世界選手権を目指すと同時にスズキの技術を世界のものとし、一層の輸出振興に役立たせたいと考えています。参加車種も昨年は125ccだけでしたが、今年はこれに250ccも加え、台数も各6台計12台出場する予定でいます。各グランプリの開催地や期日等については地図を御覧下さい。

                                   
                                                            
和服姿のP.Driver夫妻

 尚今年の6大レース参加に当っては、各レースに豊かな経験をもっている外人選手で1チームを編成してスズキチームに加えることがレースの万全を期し、優秀な成績を収める上望ましいと考えています。先日来社していたペエティー・ドライバー氏もその中の一人です。彼はわれわれの参加するレース以前の3レース (スペイン・ドイツ.フランスの各グランプリ)にもスズキの車で参加する計画をたてています。

                       
          
RT61・125ccレーサー                 RT61レーサーに乗るP.Driver              岡野・松宮・P.Driver夫妻

 このように本年は大きな計画をたてましたので、参加人員・機材・経費も昨年に比較しますと可成り膨大なるものとなることでしょう。

 欧州大陸のレース場から次のレース場迄の人員・機械の運搬には色々の案を考えてみた末、日本から特製の大型バスを持ちこむことになりました。私達はこの車を自分の手で運転し、オランダ・ベルギー・ドイツ・イタリーと都市かち都市へ、山野をぬって走ることになります。詩情豊かなチロルの山道もこの行程の中に入っています。

 選手団の編成は次のように考えていますが、詳細はまだ発表できる段階に至っていませんので次号でお知らせすることを約束いたします。

 メンバー
  監督      1名
  整備員    4名
  ライダー   3名
  事務局員  1名  
  合計      9名

 選手団の日本出発は5月25日頃、帰国は9月20日頃です。その間約4ケ月の日程になります。言葉のハンディキャップ、風俗習慣の違い等なかなか不自由な生活ではありますが、レースに勝ちたいという全員の努力でこの長い間を無事過ごしたいものと考えています。

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第9号(1961年5月発行)

海外レース参加者を囲んで(座談会)

                                 

出席者 研究部部長  丸山善九
      研究部次長  岡野武治   選手団監督
      研究第3課   清水正尚   選手団事務局担当
      研究第3課   中野広之   国内残留
      直納課     西 正則    輸出業務担当
      研究第2課   石川正純    通訳
      研究第3課   神谷安則   レーサー整備
      研究第3課   伊藤利一   レーサー整備・バス運転
      研究第3課   市野三千雄  ライダー
      研究第3課   松本聡男   ライダー
      研究第3課   伊藤光夫   ライダー
      研究第3課   増田俊吉   ライダー                  

                        
               

司会 社内報の前号ですでにご紹介したとおり、今年は、当社としてもTTレースを始め、世界の六大レースに参加することになり、鈴木自動車の名声を海外にはせる輝やかしい年にしたいと全社員が期待しています。出発を目前に控えて選手及び関係者の方々にいろいろと抱負なりご感想を伺いたいと思います。
研究部長 昨年は英国のTTレースだけを目標にして参加しためですが、今年は世界十大レース中の主な六大レースに参加、五月二十五日に出発して九月二十日頃に帰るという、四カ月間にわたる画期的な計画になったわけです。
 昨年の場合は、初めての出場だったので 勝敗よりも全車の完走ということを第一に狙ったのですが、今年は世界最高レベルの予想図を画き、勝つことを目標にして計画を進めてきました。
 車もかなりいいものができているが、四カ月間にわたり、色々な条件の下に海外レースをやるということは大変なことだと思います。とにかく、目標は鈴木の社名を海外に周知せしめるということと、それによる技術の向上が大きなねらいで、わが社の技術をもってすれば海外に雄飛できると確信しています。

司会 昨年は初出場なので完走ということを目標にされたようですが海外の強敵を相手に予期以上の良い成績を上げたと一般に考えられておりますが、実際に出場された方々はこの点どのようにお考えですか。
次長 我々としては良い成績だったとは決して考えておりません。コースの道路条件などいろいろ考えたり判断し、国内で走って六十粁を三十分台で走ればなんとかいけると思っていたところが、実際にあちらへ行って公式練習のときめ記録が三十二分ぐらい。三十分を切るのは世界一流のものばかりだったので、レース前の予想としても、トップレベルにあるとは考えられなかった。

司会 今年の予想はいかがですか。
次長 百二十五ccに関する限り、三十分を割る自信はあるね。ライダーは優秀だし。

レースの予想

司会 今年、一番むつかしいと思われるのはどのレースでしょうか。
次長 そうね、コースの条件としてはマン島が最もむつかしいだろうね。その次はオランダかな。あそこはご承知のとおり海面よりも陸地が低いといわれるところなので高い山などはなく、わん曲コースが多いのでスピードとの関係で事故が起らねばよいがと案じている。
司会 今年の強敵はどこでしょうか。
次長 世界グランプリではホンダ(二百五十cc)がどのレースでも一〜二を争うことになると思う。海外に出てもホンダは強敵だね。
司会 日本チームがそろって上位に入るということが予想されるわけですね。人気の点では如何でしょうか。

日本チームの人気

次長 ヨーロッパでは、日本チームが出なければ観衆は来ないだろう。
 国際レースとはいえ参加チームは従来ヨーロッパが大部分だったところへ新進の日本チームが遠征し、しかも強いのだからね。特にイギリスでは今迄どうしても勝てなかったドイツ、イタリーなどの強敵を日本が倒してくれるので非常な人気です。歓迎や激励のプラカードが立てられ、いたるところで声援を受けます。
部長 オートレースがふたたび日英同盟などという親善に一役買うか・・・(笑)

外人選手の採用

司会 今年とくに外人選手を採用した点は・・・
部長 昨年向こうへ行ってみて、とくに感じたことは、彼等の生活や、国状これが非常に違う。たとえば、ふだんから猛烈なスピードで走り馴れている。マン島など街なかは三十マイルという制限があるが一歩町を出ると無制限に飛ばしている。日本のようにちょっとスピードを出すときには後ろを気にしながら走るというようなことがない。(笑)
 それに、外人選手を乗せると、スズキ の車に対する、より広い層の関心を得ることになる。
 また、よい選手はよい車にしか乗らないから車の優秀性をみんなに知らせるという意味では大きな効果がある。だから今度の場合も、外人選手には個人として思う存分走らせ、社員選手にはチームとしての成果を期待したいわけだ。
次長 日本選手は、日本にいるときと同じようにはいかない。外人の方が同じ車に乗ってもよい記録を出すチャンスが多いように思う。そういった点ではハンディがある。

外国で困ること

司会 気候、風土の相異からコンディションも色々違ってくるでしょうし、ハンディが大きいでしょうね。昨年の経験などから話していただけませんか。
次長 去年はほとんどみんな練習中に転んだしね。やはりコースの不馴れな点が原因している。
司会 去年あちらで一番困っためはどんなことですか。
松本 ことばと食事だった。
神谷 着いて最初の一過間、荷物が着かずにむこうのものばかり食べさせられて弱った。日本食がついてやっと元気が出た
部長 約一カ月分の食料を飛行機に積んで行った。米も一俵持って行き、万全を期したが、税関で手間どり、一過間ほどは大分弱ったらしい。今年は馴れているので一切持っていかないということになったが。
清水 米はむこうにもあるにはあるんですが実にまずいね。まずいし馴れない食事なので余り食べないと云うことになる。マン島など特に食べ物が悪かった。
 しかし、今年はそんなわけにもいかんのでスナックバーなどに出て、好きなもの、栄養のあるものなどをなるべくとるようにしたい。ホテルも相当よいところを予定しているし各地の日本大使館からも色々心配してもらっている。
西 今度逗留する事になったベルギーのホテルでは食事のことを心配して、あちらにある日本大使館へ日本食について聞きに行ったそうですね。
司会 風俗、習慣、気候的な面で困ったことはありませんか。
中野 ロンドンからマン島に行ったが、マン島は北緯五十三度ぐらいのところなので六時十分頃着いたが太陽が輝いている。だが、街には人っ子一人いない、ホテルには七時頃着いたが、それでもまだ明るい。暗くなるのは十一時半頃で、午前三時頃にはもう明るくなってくる。ゆっくり眠れないのでこれには弱った。
伊藤 カーテンなど黒いものを作ってもらったらどうかな。
清水 なれればなんとか睡眠はとれますよ。
市野 清水さんは、あちらでずい分女の子にもてたようですね。手紙もきたようでしたがどうなりましたか。(笑)
中野 名前が覚えよかった。あの人はシミーズ・・・とかいってね。(笑)
司会 レース中に思いがけない障害や変わったことが起ったということはありませんでしたか。
松本 私は別にありませんでしたが伊藤さんが転倒したのは残念でした。
伊藤 五十二粁から五十三粁ほど走ったところで転倒した。山に上って、いく分下だり坂になっている非常に危いところでカーブが切れなかった。

初参加選手の悩み

中野 新しく、今度行かれる方は石川さん、伊藤利一さん、増田さんの三人ですね。
私は国内レースの関係で今年は残留部隊を承わっておりますが、とにかく初めて海外に出かけるというのは色々な点で不安や期待が大きいですね。
 独身の人はいいとしても、奥さんのいらっしゃる方は特にね……(笑)
石川 結婚して一年くらいで米国に一カ月ほど行っていた経験もあるし、それほどでもありません。
 ひと月ぐらいは、物めずらしさもあってあまり苦にならないと思いますが、四カ月にもなるとホームシックになると思います。ですから私は、技術的な面も大事ですが、精神的な面での方向転換などにお役に立てばと思っています。
次長 昨年はマン島だけで、しかも、往復ともロンドンをとおり遠回りだったが、今度は、欧州各国を車でまわるので興味があり、面白いと思います。
 ただ、マン島TT、オランダTT、ベルギーグランプリの三レースがすんで次のアイルランドのアルスター・グランプリまでは四十日間の期間をどう過ごそうかと頭を悩ましている。
部長 社長からいわれているのでアントワープで車を整備してもらい、その間そこで、ただ働きをすることも考えているが、四日間ほどは見物にまわることもいいのじゃないかな。
次長 今年は、ロンドン駐在事務所もでき、松宮君、西君、石川君もいるので、ことばで困るということはないだろう。
 実のところ、去年はみんなよく行って帰って来られたなと思ってね・・・(笑)
清水 インドのカラチ空港は、かなりうるさい。ロビーで休んでいる間に宣誓をさせられる。
 有色人種に特別の偏見を持たない・・などと読まされるのだが、これがなかなか読めない。(笑)
次長 僕が昨年一番困ったのは有料トイレット。ここへ入ったらタオルを持ってくる。いらんといっても使えという。(笑)
 硬貨を持っていなかったのでしかたなく一ドル紙幣を渡す破目になった。(笑)
市野 ことばが通じないのはたしかに不便です。町へ買物に行っても、値段がうまく聞けないので、つい大きな金を出して買物をする。だからおつりがうんとたくさんきちゃうんです(笑)
 ところが英国の硬貨はすどく大きい(笑)
松本 上品なさいふでは間に合わなくて市野君、こんなに大きな(手まねをして)がま口を買った。(笑)
市野 夜、飲みに行って、テーブルの上にデンとその硬貨をおき、ボーイがそれをいるだけとっていく(笑)
清水 車に乗ってチップをとられました。メーターに出ている金額だけ払うといってもきかない。(笑)
 社長や、ほかの人たちはどんどん先に行っちゃうもんでとりのこされると困るし、しかたなしに払った。(笑)
中野 ブラッセルでは安かったが、モンツァの飛行場では最初の契約と違う金額を要求された。とにかく安心しておれるのは英国ですね。
西 よく、イタリーなどはゆだんのできないところだというようにきいていますが、今度はイタリーにも行くわけだから用心しないといけませんね。
松本 市野君なんか大きながまぐちを持っているとねらわれるよ。(笑)

司会 スウェーデンのクリスチャンスタートはどういうところですか。
次長 昨年はコースが悪かったのでやめになったが。北欧は美人が多いので今年は楽しみだ。(笑)

司会 今年特にロータリーバルブを採用した事について・・・
次長 理論的に云ってもロータリーバルブの方がピストンバルブより優れており、実際にもMZあたりでは、数年前から使って、好成績をおさめている。

各選手の抱負

司会 参加選手のみなさんにそれぞれ抱負を語って頂きたいのですが。
伊藤 ライダーとしてでなく、整備で行くのですが、初めてのことなので、健康のことやことばの不自由さ、そして食物などが心配です。
 それに、大きなバスの運転をやるので、道を尋ねたりすることもあると思いますが、そんな点も気がかりです。
松本 手まね足まねでやればなんとか通じるよ。(笑)
伊藤 ええ、手まねの勉強でもしようかと思っています。(笑)
 食べ物も、栄養がかたよるのではないかと案じています。
市野 今までアマチュアレースにもかなり出てきましたが今度は会社のために全力を尽くして頑張りたいと思っています。


司会 走っている時の心境は、どんなものでしょうか・・・。無念無想ですか。
市野 そうですね。コースが長いので道なんかとっても覚えられませんし、また走っている時にそんなこと考える余裕もありません。その場でとっさにハンドルを切るわけですから・・・。
増田 はじめてなので、先輩の指導によって万全を期したいと思います。
松本 無事に任務を果たしたい。ただそれだけです。それと、ことばが不安です。
伊藤 昨年のにがい経験を十分に生かしたいと思っています。
神谷 整備を担当していますが、全車が無事であるようにと念じています。
 ふつうの車と違うので全体に細心の注意を払っています。
石川 会社に入って日も浅く、また、昨年の.経験もないので行ってみないとわかりませんが、自分の目で世界各国の優秀なレーサーをみることができることは非常に参考になると思います。そういう点で見聞を広めてきたい。
西 去年行った人々の話しなどもよくきいて、選手の皆さんが十分に活躍できるようにお役に立ちたい。
 ベルギーでは四十日ほど余裕もあるのでむこうの代理店などにも行ったりして輸出の促進に寄与したいと思っています。

司会 昨年TTレースに参加して具体的にどんな影響があらわれていますか。
西 欧州というよりも、東南アジアなど随分のびましたね。
 そういう意味では影響力は大きかったと思います。

司会 中野さん残留部隊としての感想を一つ・・・。
中野 大レースにのぞむと、どうしてもノイローゼになったり、殺気だってきますからみんななごやかに、自己の最善を尽くしてほしい。
 国内レースのことは我々国内班にまかせて安心して思う存分やってきて下さい。
部長 これはなかなか頼もしい。(笑)
清水 以前に四カ月間ぐらい合宿をやってチームワークもできてきているし、非常にやりやすいと思う。
 性能はもちろんだが、チームワークにも自信があります。

勝利のカギはチームワーク

司会 チームワークと云う事はこのようなレースに特に重要だと思いますが、この点について。
次長 昨年は随分きびしいことをいったが、向こうに行くと、ことばにも不自由するし、精神的に変になることもある。
 一度や二度は、ほんのささいなことでも頭にくることもある。
 大変だと思うが頑張っていただきたい。

司会 では最後に部長からひとこと・・・
部長 行かれる方みんな、大変だということはよくわかっている。
 とにかく、無事であってほしい。何が気がかりかといわれればすべてが気がかりです。性能についても、世界のレベルに到達はしているが、技術は一刻も停滞していない。昨年行った人が主力になって行くのだし、向こうの旅行については岡野次長も石川君も海外に長期滞在の経験を持っているので心強い。
 ただ車の問題、チームワークや食べ物など数えればきりがないがこればかりは国内でいくら心配をしても始まらないし、きりがない。幸い、社長のほか、重役も一〜二名激励に行って下さるので各選手は技量いっばいに安全に走ってほしいと思います。
 今度のように四カ月連続ということはホンダあたりもやっていない。選手も、リーダーもみな交代している。しかし、スズキは絶対にやれると自信を持っている。

司会 選手の方々にはチームワークの力をいかんなく発揮され、輝かしい成果を上げられるよう切にご健斗を期待しております。
 どうも長い間ありがとうとざいました。

(司会 宮崎教育係長)


選手団の足::大型専用バンについて

                             
                                                            
岡野次長

 前に説明しました通り、今年は欧州各国を廻りマン島のTTレースを皮切りに6つのレースに出場するのですが、昨年の125cc3台を1レースに出場させたのとでは、125cc、250cc各6台を6レースと、数字の上だけからみると24倍にもなって、レーサー及びその整備に必要な品々も相当の量になります。これらの品物を長い所では1カ月もありますが、大体7日から20日の間に運び整備するのは大変な事です。そこで今年は写真にあるような大型専用バンを作りました。この専用バンは定員12人とレーサー16台を載せる事が出来、内部には整備に必要な工具を入れる箱などが備えられています。運転席を含む12の席のうち4個は特急列車の座席のようにリクライニング・シートになっているので、この席で交替に寝ていくことができます。又バンの両側面には大きな”スズキ”のマークと“Suzuki Racing Service”の文字がくっきりと記され、今度”スズキ・チーム”の勇姿と共に関係各誌にぎわす事でしょう。


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