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               めまぐるしく変わった商品計画と開発日程実績

(1)二転三転の商品計画

(注)F:4気筒、T:2気筒

■最初の「4サイクル二輪車の長期商品計画会議」は、1974年2月5・6日、弁天島のスズキ荘で開催された。出席者は二輪設計部(平野・川原・友田・森川)・商品企画部(松本・渡辺・石川)・USスズキ(宮下・藤井)・その他と私。「4サイクルプロジェクト」への転出の辞令がまだ出ていない私は、東京から参加した。二日間の検討による開発順序は「350ccT・250ccT・750ccF・500ccF」となった。

■1974年2月21日には、上層部から、「カワサキZ1以上のスーパー・バイクを真っ先に開発せよ。そのあとは、半分の2気筒だ。」との指示が出た。(960ccF、1974年4月中〜下旬出図、6月29日完成)

■1974年8月20日には、更に上層部から、「開発中のスーパー・バイク(960ccF)をシャフトドライブにしたものも進めよ。」との指示が出た。(960ccFシャフトドライブの試作車の完成は、大分おくれ1975年2月28日)

■1974年10月5日、専務より「750ccFの開発は止めたらどうか?。」(750ccF、1974年8月9日出図、10月末完成・テスト保留となる)
輸出部長計画案「スーパー・バイク」「半分の480ccT」「250ccT」「350ccT」「550ccF」

■国内免許法改正(400cc)に伴い、1974年11月14日、「400ccT」開発を決定。

■1974年12月4日発行の商品計画日程「960ccF」「750ccF」「400ccT」「250ccT」「550ccF」

● 1974年12月27日、アメリカの排ガス規制の実施は1978年モデルまたは1978年1月1日からに遅れるだろうとの情報。

■1975年1月5日、「960ccF」の生産化中止と決定。

■1975年4月2日発行の商品計画日程「400ccT」「750ccF」「550ccF」「250ccT」「1000ccF」

■1975年6月23日発行の商品計画日程「400ccT」「750ccF」「550ccF」「250ccT」「1200ccF」(250ccTはSOHCで1975年7月22日出図、10月1日に完成したが、若干のテストをしただけで中止となった。1200ccFは1975年9月10日レイアウト検討会を実施したがその後開発が中止された。)


 このあたりまで、開発計画はめまぐるしく変更になった。これ以降も小変更はあったが・・・やっと落ち着いてきたと言うところ。

 「4サイクルプロジェクト」が発足して1年間近く、無駄足をふんでいたようにも思えるが、4サイクルエンジンの勉強期間として非常に有意義な助走期間であったと思う。もしこの期間が無く、生産化に突っ走っていたら、大失敗につながったような気がしている。

(2)開発日程の詳細実績

GS750・GS400・GS550・GS1000・SP370開発まで(1974〜1978年春)を記載する。

GS シリ−ズ開発日程実績
GX960 GS400 GS750 GS550 海外テスト
1974 2 1 「4サイクルグループ」発足 .
5〜6 商品計画検討会(スズキ荘)設計・商品企画部門とUSスズキ .
21 スーパーバイク開発の指示 .. .. ...... .
3 . .
4 17〜25 開発試作図出図 .
5 . . .
6 29 開発試作完 .
7 . . .
8 . . 9 開発試作図出図 .
9 30 制式図出図 . . .
10 28 谷田部テスト 開発試作完(開発中止 .
11 . . .. .
12 砂型生試車完 .
1975 1 6 生産化中止命令 31. レイアウト検討会. ..
28〜29 谷田部テスト
2 28 シャフトドライブ試作車完成 . . .
3 .. 3 設計試作図出図 .
4 17 設計試作エンジン完 3 レイアウト検討会 .
5 20 設計試作車体完 設計試作図出図 .
6 19 カ−ショック問題化 . . 17 レイアウト検討会 .
7 . . . . 17 設計試作図出図 .
8 .. .. 4〜9 設計試作エンジン完 .. .. ..
7〜22 設計試作車体完
9 . . . . 12〜22 設計試作車完 .
10 . . クランクフレ-キング問題発生 . . .
11 . . . . . . .
12 17 USスズキ:カ−ショックOK . . . . .
1976 1 30. 制式図出図. 4 全負荷耐久2万キロOK 14. 第2次設計試作図出図. ..
10 制式図出図
2 . . . . . . 2/15〜3/13 GS400,750 USテスト
3 18. 砂型生試完. 20. 生産試作完. 5 第2次設計試作車完 ..
19 第3次設計試作図出図
4 . . 4 第2次生産試作完 15 第4次設計試作図出図 4/17〜5/4 GS400,750 US耐暑テスト
5 13 生産試作完 13 量産試作完 . . .
6 .. .. 4 量産開始 15. 制式図出図. GS400,750 ヨ-ロッパテスト.
7 国内認定申請
7 10 量産試作完 .. .. . 砂型生試完. ..
27 国内認定申請
8 27 量産開始 31 国内認定認可 . . .
9 . . . . . . 9/6〜10/6 GS550 USテスト
10 29 国内認定認可 . . 15 生産試作完 .
11 . . 1 国内販売開始 16 国内認定申請 .
12 1 国内販売開始 .. 10 量産試作完 .
1977 1 .. 21 量産開始 .
2 10 国内認定認可 .
3 . . .
4 . . .
5 . . .
6 15 国内販売開始 .
.
GS250(SOHC) GS1200 GS1000 SP/DR370 海外テスト
1975 3 24 レイアウト開始 .. .. .. .
4 . . .
5 . . .
6 20 レイアウト検討会 .
7 22 設計試作図出図 .
8 . . .
9 . . 10 レイアウト検討会(計画中止 .
10 1〜17 設計試作車完 .. .
11 . . .
12 . [開発中止となる] .
1976 1 .. .
2 .
3 .
4 .
5 .
6 .
7 8〜14 設計試作図出図 .
8 . . .
9 4 設計試作車完 設計試作図出図 .
10 29 第2次設計試作図出図 . . .
11 . . . . .
12 18〜25 第2次設計試作完 4〜13 設計試作車完 .
1977 1 . . 31 第2次設計試作図出図 .
2 . . . . .
3 22 第3次設計試作完 . . .
4 30 制式図出図 11 第2次設計試作車完 .
5 . . . . .
6 砂型生試完 16 制式図出図 .
7 . . . . .
8 . . 11〜22 砂型生試完 GS1000 USテスト
9 16〜22 生産試作完 . . 9/18〜10/16 SP/DR370 USテスト
10 . . 19,28 生産試作完 .
11 12 量産試作完 . . .
12 13. 量産開始. 5 量産試作完 ..
20 国内認定申請
1978 1 .. 16 量産開始 .
2 . . 2/8〜2/27 GS1000ヨ-ロッパテスト
3 ? 国内認定認可 .
4 28 国内販売開始 .

生産化中止決定後のGX960谷田部テスト(1975/1/29)
左から2番目が筆者、右から4番目が藤井
GS750
GS400 GS550
GS1000 アイデアスケッチの検討
(左から水城・中野・藤井・森川・斉藤)
GS1000 SP370

(3)組織と人員

 1974年2月「4サイクルプロジェクト」は、2名の設計担当・3名の実験担当の計5名で発足した。エンジンのレイアウトは「4サイクルプロジェクト」で行い、図面の作成は「エンジン設計課」で行なった。その後順次実験要員が増員され、1974年末には10名となった。
 1975年になって、GS400・GS750・GS550 の3機種の併行開発が始まると3つの実験グループが結成され、年末には実験要員の総数は24名となった。
 GS400担当グループは、その後OHC単気筒のSP370、GS400の派生機種GS425・GS450、SP370の派生機種GN400・SP400、2気筒4バルブのGSX400、OHC単気筒のGN125・SP125、4気筒4バルブのGSX400F等を担当することになる。
また、GS750担当グループは、その後GS750の派生機種GS1000・GS850G・GS750G・GS1000G・GS1100G、4バルブのGSX750等を担当することになる。
また、GS550 担当グループは、その後 GS550の派生機種GS500・GS650・GS650ベースのXN85ターボ・GS650G、2気筒4バルブのGSX250・GSX300 、4気筒4バルブ のGSX550・GSX500 等を担当することになる。
1976年には、「4サイクルプロジェクト」結成当時から在籍していた 2名の設計担当は「エンジン設計課」に戻り、実験要員の方は更にもう1グループが増設され総員32名となった。このグループは4バルブのGSX1100、OHC単気筒のSP500、DOHC2気筒のGR650等を担当することになる。
1977年には、更に増員され、総員40名余の「4サイクル実験グループ」となったのである。


(4)日本メーカー各社の4サイクル二輪車新機種の発売実績

1965〜1981年の各社の新機種発売実績を示し、新規設備を設置しての新機種は「赤の太字」で示す。

4サイクル二輪車新機種の発売実績(赤、太字は新設備)
西暦 和暦 ホンダ カワサキ
1965 昭和40 CB450 . . . . . . . . . .
1966 昭和41 . . . . . . 650W1 . . . .
1967 昭和42 . . . . . . . . . . .
1968 昭和43 CB250,CB350 . . . . . . . . . .
1969 昭和44 CB750F . . . . . . . . . .
1970 昭和45 . . . . . . . . . . .
1971 昭和46 CB500F . . . . . . . . . .
1972 昭和47 CB350F . . . . . 900Z1 . . . .
1973 昭和48 (CB360T.CB250T) . . . . . (750RS) . . . .
1974 昭和49 (CB550F) . . . . . 400RS . . . .
1975 昭和50 GL1000 (CB400F) (CB500T) XL125 XL250,XL350 . . . . . .
1976 昭和51 (CB400F-T,U) . . . . . KZ750T . . . .
1977 昭和52 CB400T,CB250T . . . . . Z650F (Z1000) Z200,KL250. .. ..
1978 昭和53 (CB400N(ホ-クV)) CBX GL500,GL400 XL250S . . (Z1R) (Z650SR)
1979 昭和54 CB900F,CB750K (CB650) XL500S (XL185) (XL125S) . Z1300 (Z1000ST) (Z1000FX) (Z750FX) Z400FX
Z500 Z250
1980 昭和55 (GL1100) (CB250RS) (CM200T) (XR200) (XL80S) (XR80) (Z1000EFI) (Z750FX-U) (Z550) (Z440) (Z250)
1981 昭和56 (XR500R) (XR250R) (XR200R) (XL100S) (XR100) (XR80) (KZ1100GP) (KZ1100シャフト) (KZ1000J) (Z550GP) (KZ305)

4サイクル二輪車新機種の発売実績(赤、太字は新設備)
西暦 和暦 ヤマハ スズキ
1965 昭和40 . . . . . . . .
1966 昭和41 . . . . . . . .
1967 昭和42 . . . . . . . .
1968 昭和43 . . . . . . . .
1969 昭和44 . . . . . . . .
1970 昭和45 650XS1 . . . . . . .
1971 昭和46 . . . . . . . .
1972 昭和47 TX750 . . . . . . .
1973 昭和48 TX500 . . . . . . .
1974 昭和49 . . . . . . . .
1975 昭和50 . . . . . . . .
1976 昭和51 XT500,TT500 GX750 . . . . . .
1977 昭和52 XS360,GX400,GX250 . . . GS750,GS400 GS550,GS500 . .
1978 昭和53 XS1100 (SR500) (SR400) . (GS1000) SP370,DR370 . .
1979 昭和54 . . . . (GS850G) (GS425) (GS1000S) .
1980 昭和55 SR250,XT250,TT250 XJ650 XJ400 (XS850) GSX1100,GSX750,GSX400 GSX250 (GS1000G) (GS750G)
(GS450) (GN400) (SP400) (DR400)
1981 昭和56 XV1000,XV920,XV750 (XJ750) (XJ550) (SR185) SP500,DR500 GSX400F (GSX1100S) (GS1100G)
(GSX750S) (GS650E) (GS650G)
発売機種は、エンジン主体に書かれており、例えば「GS750L」というようなエンジンが「GS750」と同じで車体が異なるものなどは記載していない。
機種名最後の「G」は、シャフトドライブ車である。


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